喜怒哀楽

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無機質で論理的。【コンビニ人間】

ネットで小説を買ってそれが届くまで何を読もうか。
と考えていたら本棚に薄くてすぐに読み終わりそうな本が!
それが

コンビニ人間 著:村田沙耶香

コンビニ人間 (文春文庫)



この本は一言で言うと不思議な感覚になる。
主人公自体は無機質で論理的。
コンビニも無機質で効率的。
なのに何故か表現が豊かなのが面白い。
主人公の無機質な感じも相まって周りの風景がリアルに描写されている。

これは僕が食品系工場で働いた時の感覚に似ている気がする。
食品を扱う場合、当たり前だが消毒などをして清潔にしてから生産ラインに立つ。
髪の毛が落ちないようにするための帽子は何重にもなっていてマスクもしているから目元しか見えない。
突然ユニフォームはみんな一緒。パッと見るとそこにいる人みんなが同じになる。
そして、人間味を削ぎ落とされた気分になる。仕事内容も単純で同じ作業の繰り返し。

それなのに人間味を削ぎ落とした空間だからこそちょっとしたことに敏感になり、人間らしさを感じることが多くなる。
モノを渡すときの手の重みやちょっとした掛け声の質に人間らしさを感じるようになる。
きっとそれは無機質だからこそ気付く点であって、コンビニ人間の描写もこの感覚に近い。

序盤はクセが強いなぁと読み進めていたが、終盤に近づくにつれてそのクセもなんだか理解できるようになってきて気づいたら共感していた。
とくに、誰もが感じたことがあるであろう社会の圧。
それをうまく登場人物のキャラクターに合わせて表現されていて社会の縮図のようだった。

これを読んでから社会を見渡すと不思議な気分になる。

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